囲碁や将棋の世界で、人工知能が人間を打ち負かしたことを報じるニュースが、いまや目新しくなくなってきました。しかしなぜ我々はこの人工知能とプロ棋士の勝敗に一喜一憂してしまうのでしょうか?
そこには人工知能が新しい世界を切り開くことへの期待感と、人間の知能を超えた知能の出現に対する畏怖が入り混じっているのかもしれませんね。人工知能が人間の様々な職業を奪うというのはよく言われますが、なにより政治機能を人工知能が担うようになれば、それは実質「人工知能に支配される人類」の構図を見ることもできるでしょう。
でも「人間vs人工知能」という対立構造だけが人間と人口知能のあり方ではないはず。
――つまり「人工知能を人間の知能に融合すればいいんじゃん」というアプローチもアリなのでは?
そんな人工知能と人間が「共存・融合」する可能性を描いた書籍『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき』がNHK出版より刊行されました。
(※「シンギュラリティ」は「人工知能が人間の知能を追い越し、以前とは全く異なる世界が到来すること。技術的特異点」のこと)
本書の著者レイ・カーツワイル氏は人工知能の世界的の権威で、現在はGoogle社にて機械学習と自然言語処理の技術責任者を務めている方です。
本書で予想されている可能性は実に刺激的な内容となっており、その一部を紹介すると、
・2020年代の終わりまでに、コンピュータの知能が人間の知能と区別がつかなくなる。
・分子レベルで設計された、大きさがミクロン(1ミリの1000分の1)単位のロボット“ナノボット”ができる。
・何十億ものナノボットが脳・人体を循環するようになる。
その結果として、
・人間の知能は大幅に高まる
・人類は人工知能と融合し、人体は今のままの人体ではなくなる
・ナノボットが脳を制御し、ヴァーチャル・リアリティを体験できるようになる
など、まさにサイバーパンクの世界!
ここから筆者の妄想ですが、「富裕層はよりよい人工知能と融合し、貧困層は性能の低い人工知能としか融合できないため、世界の格差はますます拡がって、貧民街で特殊な能力をもったニュー・ヒーロー(※ニンジャ可)が……」などなど、想像力をかき立てられること間違いなし!
明後日から始まるGW連休に読書に耽りたいあなたは、ぜひ『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき』をお読みになってみてはいかがでしょうか?
■『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき』
- レイ・カーツワイル著
- 監訳/井上健(東京大学名誉教授) 翻訳/小野木明恵、野中香方子、福田実 編/NHK出版
- 発売 2016年4月26日
- 定価 1,620円(税込)
- 仕様 四六判上製 256ページ
- ISBN 978-4-14-081697-4
■著者紹介
レイ・カーツワイル Ray Kurzweil 1948年ニューヨーク生まれ。発明家、思想家、フューチャリスト。人工知能の世界的権威であり、現在はGoogle社で機械学習と自然言語処理の技術責 任者を務める。これまでにオムニ・フォント式OCRソフト、フラットヘッド・スキャナーなどを発明し、MITレメルソン賞やアメリカ国家技術賞などを受 賞。2002年には「発明の殿堂」に名を連ね、PBSは彼を「過去2世紀においてアメリカに革命を起こした16人の発明家」の一人に挙げている。2008 年にはシリコンバレーにシンギュラリティ・ユニバーシティを共同で創設。