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レーザー物理学の大発明!「光ピンセット」が2018年のノーベル物理学賞を受賞

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本記事は、“Optical Tweezers” Wins The 2018 Nobel Prize In Physics
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約2分42秒

• レーザー物理学の分野で目覚ましい功績を残した3人の科学者が、2018年のノーベル物理学賞を受賞しました。
• 受賞理由は、光ピンセットと高強度超短光パルスの発見です。
• 現在、この技術は、フェムト秒単位の現象の測定や、深部組織の腫瘍の治療、そのほかさまざまな用途で役立てられています。

 

2018年のノーベル物理学賞は、3人の科学者たちに授与されました。レーザー物理学を用いて微細な物体を操作する方法を発見したという、彼らの驚くべき業績が評価されたのです。


賞の半分は、アメリカのベル研究所に所属する物理学者、アーサー・アシュキン博士に贈られました。彼は、ナノ粒子や生きた細胞やウイルスなどを2つのレーザー光の間に捕捉する技術を発見。この手法は「光ピンセット」と呼ばれています。


残る半分の賞は、ウォータールー大学のドナ・ストリックランド博士と、ミシガン大学のジェラール・ムル博士が共同受賞しました。彼らの功績は、高強度のレーザーパルスを作り出して、フェムト秒単位でターゲットに刺激を与えることができるという技術の開発です。


アシュキン博士は歴代最高齢(96歳)での物理学賞受賞となり、その意味で、今年のノーベル賞は極めて特別なものとなりました。アシュキン博士は、1964年にレーザーの発明がノーベル賞で初めて認められた後、この技法の研究に取り組み始めました。また、女性科学者がノーベル物理学賞を受賞したのも、実に50年ぶりの出来事。ストリックランド博士は、マリー・キュリー博士(1903年)、マリア・ゲッパート=メイヤー博士(1963年)に次ぐ、3人目の女性受賞者となりました。

 

受賞者たちの功績


若きアシュキン博士は、光を使って微細な物体を動かすことに興味を抱いていました。1960年代当時、光が物体に圧力(輻射圧)を与えることはすでによく知られていましたが、小さすぎて測定することができないという問題がありました。そこで、彼は次のような一連の実験を行いました。ガラスのセルに満たした水の中にマイクロメートル単位のラテックスの球体を分散させ、そのセルにアルゴンレーザーを照射したのです。

 



すると、球体が押されてレーザーから離れた端まで移動し、ビームの軸に沿って捕捉されることが分かりました。これはまさに彼が輻射圧のモデルから予想していたことと一致していました。これは、ビームの強さによって起こる空間的変動によるものです。


屈折作用によって、球体を通った光は折れ曲がり、一定の角度で出射します。これによって、ラテックスの球体に反動が生じます。ビームが均一であれば正味の反動はゼロになりますが、レーザービームは中心が一番強くなっているため、球体にかかる輻射圧によって、球体は中心軸に向かって押し出されるのです。


ラテックスの球体は、この実験におけるほんの一例にすぎず、実際にはあらゆる微粒子に応用することができます。レーザービームは強く集束し、ナノ粒子をビームの中心に向かって引っ張ることによって粒子をその場所に安定した状態で固定しておくことができます。そのため光ピンセットという名前が付けられたというわけです。


この光ピンセット、すなわちシングルビーム光トラップの技術は、バクテリアやウイルスといった生きた細胞を誘導、制御するのに利用することができます。

1985年、ストリックランド博士とムル博士の研究によって、これまででもっとも短く高強度なレーザーパルスを生み出す技術が開発されました。これを実現するために、彼らは最初にレーザーのパルス幅を一旦時間的に引き延ばしてから増幅し、最後に圧縮するという手法をとりました。時間的に圧縮することでパルスは短くなり、同じ空間により多くの光が集まることでパルスの強度を高めることができます。さらに特筆すべきなのは、この手法を使えば、光を発生させる材料に損傷を与えずにすむということです。


CPA(Chirped pulse amplification)と呼ばれるこの手法のおかげで、生きた細胞に正確に穴を開けたり、切ったりすることが可能になりました。事実、この最先端技術は今や世界中のほぼすべての高出力レーザー(100テラワット以上)に採用されるまでになっています。

 

実用例


近年、光ピンセット技術は幅広い生体系の調査の分野において特に成果をあげています。吸収体や誘電体などをはじめとする微粒子の操作が、光ピンセットを使えば可能となるからです。
たとえば、粒子が光を吸収しないような波長を選択すれば、粒子が加熱されることはありません。そうすれば、細胞を傷つけることなく、必要な場所へ(ただし、レーザーの波長にもよりますが数百ナノメートルの範囲で)動かすことができるのです。


この研究が多くの研究者たちの熱意を生み、超短光高強度レーザーパルスはその後さらに精度を上げ、データストレージシステムの強化や、アト秒単位、フェト秒単位での測定も可能となりました。今日、CPAは目のレーシック手術や深部組織の腫瘍の治療、物理学の基本原理の研究など、多岐にわたる用途に応用されています。

 

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