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最大級のブラックホールはどれほど大きいのか? 太陽の質量単位で比べてみたトップ8

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本記事は、8 Biggest Black Holes In The Universe | As Per Their Solar Masses
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約5分57秒

最大級のブラックホールは「超大質量ブラックホール」と呼ばれ、その質量は太陽の数十万から数十億倍にもなります。太陽の質量は1.989×10の30乗㎏で、地球の約33万3千倍です。【この太陽の質量が、天文学において質量の単位として用いられています】

 

ほとんどすべての大きな銀河には、その中心に超大質量ブラックホールが存在しているという説があります。実際、ブラックホールの形成と銀河の形成には強い関連性があると言われています。

 

宇宙には何百万もの超大質量ブラックホールが存在しますが、とてつもなく巨大なものは珍しく、現在までに確認されているものはわずかです。

大きなブラックホールの質量を決定するのは非常に難しい

超大質量ブラックホールの質量を測定するには、ドップラー測定、広輝線反響マッピング、M-シグマ関係、速度分散など、様々な複雑な手法が用いられます。

 

これらの方法で得られた質量は、互いに矛盾する結果となることが度々起こります。そのため、未だに幅広く研究が続けられています。

 

この記事では、少なくとも10の累乗の規模までは測定された質量が判明している最大級のブラックホールを集めてみました。このリストは完全なものではありませんが、私たちの宇宙がいかに複雑で広大であるかを大まかに知ることができます。

8. ほうおう座銀河団の中心にあるブラックホール

ほうおう座銀河団の銀河の中心にある超大質量ブラックホールからの強力な電波の噴出
青色の領域内の空洞は、NASAのチャンドラX線観測装置によって撮影されたもの

 

太陽質量:2×10の10乗

 

ほうおう座銀河団は、最も質量の大きい銀河団の一つで、その質量の大部分は暗黒物質とその銀河団ガス【銀河団内を満たす高温のガス】で占められています。

 

銀河団の中心となる銀河にある超大質量ブラックホールは、この仕組みにエネルギーを送り込んでいます。その質量は太陽の200億倍と言われており、「事象の地平線」【光が重力から脱出できる境界線】の直径は1,180億kmの規模になるはずです。

 

チャンドラのデータや他の波長での様々な観測により、このブラックホールが急速に成長していることがわかっており、その割合は、一年で太陽の質量の60倍です。しかし、すでに非常に大きなブラックホールであるため、この速度は持続不可能です。この成長は1億年以上続くことはないでしょう。

7. 楕円銀河「NGC 4889」

中心付近の明るい球体が宇宙的な驚きを秘めているNGC 4889
画像提供:NASA

 

太陽質量:2.1×10の10乗

 

1785年に発見されたNGC 4889は、地球から中央値3億800万光年の距離にある北天のかみのけ座銀河団の中で、最も明るい銀河です。

 

NGC 4889の中心には、最大級のブラックホールがあり、その中に入り込んだ塵やガスの摩擦によって、銀河団ガスを加熱しています。この超大質量ブラックホールは、天の川銀河の中心部にあるブラックホールの約5,200倍の質量を持ち、その重さは約210億太陽質量にもなります。

 

このブラックホールの事象の地平線の幅は200〜1,240億kmで、これは冥王星の軌道の直径の2〜12倍に相当します。

 

現在、このブラックホールは休止中で、その周りに形成される星は安定しているようです。それでも、ハッブル宇宙望遠鏡がこの超大質量ブラックホールの周囲にイオン化した媒体を発見したことから、NGC 4889は数十億年前にはクエーサー【恒星状天体】であった可能性があると考えられています。

 

クエーサーとは、非常に明るい活動銀河核のことで、超大質量ブラックホールがガス状の降着円盤に取り囲まれています。クエーサーは、強力な力で塵やガスを引き込み、数百万度に加熱してエネルギーを大量に放出しています。

6. クエーサー「APM 08279+5255」

太陽質量:2.3×10の10乗

 

2002年、チャンドラの観測により、クエーサーAPM 08279+5255の動力源である超大質量ブラックホールから、光速の40%にも及ぶ高速風がガスを吹き飛ばしている証拠が発見されました。

 

このクエーサーは、やまねこ座にあり、太陽の1兆倍の明るさを持っています。ほぼすべての波長で明るい天体であり、最も研究されている遠方天体の一つです。

 

APM 08279+5255を動かしている超大質量ブラックホールの重さは、230億太陽質量(分子円盤の速度で測定)です。しかし、反響マッピングと呼ばれる別の測定手法では、このブラックホールの重さは100億太陽質量とされており、両者の測定手法には大きな違いがあります。

 

このクエーサーの二重像は、重力レンズ効果(間にある銀河によってクエーサーの光が曲げられること)によるものです。また、この効果によりクエーサーの光は100倍に増強されるため、120億光年離れていても、その特徴を詳しく調べることができます。

 

また、最近10年間の研究で、APM 08279+5255には、地球の海を100兆回以上も満たせるほどの水があることが判明しました。

 

5. 楕円銀河「NGC 6166」

ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 6166のクローズアップ画像

 

太陽質量:3×10の10乗

 

NGC 6166は、ヘルクレス座の方向、4億9千万光年の距離にある、(X線放射量において)最も明るい楕円銀河の一つです。約3万9千個の球状星団がこの銀河の周りを回っており、NGC 6166のハロー【銀河の円盤を包みこむように丸く分布している星の成分】が銀河団ガスと滑らかに融合していることがわかります。

 

この銀河の中心には、太陽の300億倍の質量をもつ超大質量ブラックホールがあります。このブラックホールは、毎年約200太陽質量のガスを巻き込み、大きな相対論的ジェットを発生させています。

 

この銀河の中心部には、温度が3万ケルビン【絶対温度】以上の青白い珍しい星であるO型星がいくつかあるのではないかと科学者たちは考えています。

 

4. クエーサー「H1821+643」

H1821+643
画像提供: WIYN Observatory, NASA

 

太陽質量:3×10の10乗

 

高輝度のクエーサーH1821+643は、りゅう座内の、巨大で強い冷却流のある星団の中にあります。

 

2014年、研究者たちはH1821+643を最も巨大なブラックホールの一つとして検出し、その質量を正確に計算したところ、300億太陽質量に相当することがわかりました。このブラックホールの事象の地平線の幅は1,150AU(1AU【天文単位】は約1億5千万kmに相当)で、その平均密度は1立方メートルあたり22グラムと、地球上の空気よりも小さいです。

 

また、このクエーサーの周囲にある銀河団ガスは、他の大きな銀河団とは大きく異なり、エントロピー【宇宙の物質やエネルギーの拡散化】や温度が大幅に低く、勾配も急であることがわかりました。

 

最近、このクエーサーを詳細に分析した結果、私たちの宇宙は大量のイオン化水素とイオン化酸素で満たされていることが判明しました。

 

3. 楕円銀河「IC 1101」

1995年6月にハッブル宇宙望遠鏡で観測されたIC 1101

 

太陽質量:(4-10)×10の10乗

 

宇宙で最も明るく大きな銀河の一つであるIC1101は、その中心に太陽の400〜1000億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールを抱えています。

 

これは地球から10億4,000万光年の距離にある楕円形の銀河です。約100兆個の星の質量を持ち、中心から200万光年の距離に広がっています。

 

他の大質量銀河と同様に、IC1101には金属を多く含む星が多数存在し、そのうちのいくつかは110億年前のもので、黄金色に輝いて見えます。

 

2. 楕円銀河「S5 0014+81」

S5 0014+81に似た非常に明るいクエーサーが、2つの高エネルギージェットを持つガス状の降着円盤に囲まれている様子を描いたイメージ図

 

太陽質量:4×10の10乗

 

S5 0014+81は、最もエネルギーの高いタイプの活動銀河核に属しており、地球から約120億7000万光年離れたケフェウス座の高赤緯領域に位置するブレーザー【活動銀河核の一種】です。

 

これまでに知られているクエーサーの中で6番目に明るく、10の41乗ワット以上の明るさを持っています。これは、天の川銀河のすべての星を合わせたものの25,000倍の明るさに相当します。

 

このブレーザーの中心にあるブラックホールは非常に激しく、毎年膨大な量の物質(4000太陽質量以上の物質)を飲み込んでいます。

 

2009年、観測衛星ニール・ゲーレルス・スウィフトの観測データから、中心部のブラックホールの質量を算出することができました。その結果、このブラックホールの質量は太陽の400億倍、事象の地平線の幅は2367億kmで、これは冥王星の公転半径の40倍に相当します。

 

1.クエーサー「TON 618」

太陽質量:6.6×10の10乗

 

TON 618は、地球から103億7,000万光年の距離にある超大光度のクエーサーです。その中には、太陽の660億倍の質量を持つ、人類に知られている最大のブラックホールがあります。

 

1957年に、天の川の平面上にはない淡い青色の星の調査で初めて発見されました。1970年に行われたより詳細な電波調査により、TON 618はクエーサーであることが判明しました。

 

TON618は、銀河の中心にある巨大なブラックホールの周りに渦巻く、非常に高温のガスの降着円盤と考えられています。その明るさは、銀河系の他の部分を凌駕するほどです。実に太陽の140兆倍に相当する4×10の40乗ワットの明るさを持ち、宇宙で最も明るい天体の一つです。

 

降着円盤のガスは非常に高速(秒速7,000km近く)で移動しているため、このブラックホールは並外れて強い重力を発揮していることになります。また、このような巨大ブラックホールの事象の地平線は、直径が2,600AUにもなるでしょう。

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