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逆浸透システムでもっと効率的に海水を飲料水に変えられるか?超高輝度X線で水のろ過プロセスを解明

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本記事は、Scientists Illuminate Water Filtration Process Using Ultrabright X-Rays
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約2分25秒

・科学者たちが逆浸透膜を分子レベルで研究した。
・この発見は、逆浸透システムに使用される膜の性能向上に役立つかもしれない。
・浄水コストを大幅に削減できる可能性がある。

 

地球にはおよそ14億立方キロメートルの水が存在しますが、そのほとんどは海洋にあり、飲用可能な淡水はわずか3%です。この水は決して静止することはありません。海から蒸発し、大気を通過し、地上に降り注ぎ、そしてまた海に流れ込むのです。

 

海水を飲料水に変える代表的な技術のひとつが「逆浸透」【人工的に浸透圧以上の圧力を塩水側にかけると、塩水にある水の分子だけが半透膜を超えて、淡水側に押し出される】です。国際水協会によると、この技術を使って一日あたり250億ガロン【94,635,294.6リットル】以上の淡水が作られています。

 

逆浸透(RO)では、部分的に透過性のある膜を使って水から分子、イオン、より大きな粒子を除去します。これは新しい技術ではないものの、浄化プロセスに使用される膜の構造は、特に分子レベルでは以前はよく理解されていませんでした。

 

工業用のROシステムは、塩分を含んだ水を加圧して膜にきれいな水を通します。100ガロン【約378.5リットル】のきれいな水を作るために、ROシステムは1キロワット時近くのエネルギーを消費します。これは、50ワットの電球を20時間点灯させるのに十分なエネルギー量です。

 

このようなシステムで使用される膜の性能を向上させれば、大幅なエネルギー節約につながる可能性があります。

 

より薄く、より透過性の高いポリアミド・バリア層を、最適なレベルの濡れ性【固体表面に対する液体の親和性(付着しやすさ)】と架橋結合【二つ以上の分子が橋を架けたような形で結びついて、ひとつに結合すること】を持つものにすれば、機能特性を高め、透過性を向上させ、浄水コストを下げることができるはずです。

 

そこで、アメリカのブルックヘブン国立研究所の研究者たちは、逆浸透膜を分子レベルで研究することにしました。膜を高効率にするために分子構造がどのような役割を果たしているかを解明したのです。この発見は、より高度な膜の開発に利用できます。

 

膜の開発と解明

研究チームは、水と油の界面での薄いポリマーシートを開発するために、界面重合【界面でポリマー(重合物、固体)を作ること】として知られる技術(工業的アプローチに非常によく似ている)を使用しました。具体的には、二液性エポキシのように、分子物質の一方を油に添加し、他方を水に添加しました。

 

この2つの分子物質は、油と水が接触する部分で互いに反応します。この反応によって、人間の髪の毛の何千倍も細いポリマーの薄いシートが形成されます。これは、工業用のROに使われている膜によく似ていますが、それよりもはるかに滑らかです。

 

このような薄いポリマーシートを分析するために、研究チームは高輝度X線(ブルックヘブン国立研究所の国立シンクロトロン光源IIから)と高度なシミュレーションツールを使用しました。そして、シートの分子構造をより深く理解するために、斜入射広角X線散乱と呼ばれる技術によってX線の散乱パターンを観察したのです。

 

X線がわずかな角度で膜に当たり、表面から散乱する様子
出典:研究チーム

 

この散乱法では、膜の表面から散乱するように、X線をわずかに傾けた角度で当てます。その後、特殊な装置がX線を捕捉し、膜の構造に特異的な散乱パターンを記録します。

 

散乱パターンは、ポリマー内の隣接する分子が互いに対してどのように整列しているかを示すものです。研究チームは、これを分子パッキングモチーフと呼んでいます。今回の研究では、垂直モチーフと平行モチーフを検出することができました。

 

調査結果によれば、垂直モチーフは最適なろ過特性と関連しています。また、分子構造は通常、膜の表面に配向しています。この点は、膜の水経路の向きと関連づけることができます。

 

研究チームは今後、様々な種類の膜を探索し、X線散乱パターンを比較することで、包括的な構造と機能の関係を構築する予定です。彼らは、今回の発見が、水を効率的にろ過する「次世代膜」の開発を加速させることを期待しています。

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