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第4の回路素子「メモリスタ」を有効活用!AIアルゴリズムを効率的に実装できるように

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本記事は、Memory Processing Units Can Efficiently Implement AI Algorithms
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約2分30秒

・新しいメモリスタベースのインメモリ・コンピューティング装置は、偏微分方程式を既存のスーパーコンピュータよりも良好に解くことができる。
・研究者らは、より優れた処理能力と電力効率を備えたプラズマ反応器のシミュレーションを実証した。

 

メモリスタという電気部品をご存知でしょうか。回路中の電流の流れを制御する不揮発性モジュールです。このモジュールをシリコンチップ上に新しい方法で配置することで、エネルギー消費を大幅に削減(ほぼ100倍)しながら一般的なコンピュータとして利用できる可能性があることが判明しました。これによってスーパーコンピュータはより効率的になり、スマートフォンのような低消費電力デバイスの性能も向上することになります。

 

過去50年間、半導体メーカーは一貫してハードウェアの性能を向上させてきました。プロセッサやメモリは非常に高速になったものの、真に効率的なものにはできませんでした。データの送受信を待つ必要があるからです。

 

この制限を克服するために、メモリスタ(memristor:記憶と抵抗【memory resistor】という2つの単語を組み合わせて命名)を使うことができます。その名の通り、プロセッサとメモリ・ユニットを同じデバイスで実現し、複数の状態を持つように構成できるため、従来のコンピュータが経験したデータ転送のオーバーヘッド【ある処理を行うとき、作業そのものに必要な正味のコスト(処理時間・必要メモリ量など)とは別に、作業の準備・管理・後処理などで必要となる付帯的コスト】をなくすことができます。

 

バイナリ・ビット(0と1)とは異なり、メモリスタには連続した抵抗があります。これは、メモリスタのアナログ的性質を利用した人工ニューラルネットワークのようなアプリケーションに有益です。一方、従来型のコンピュータは、メモリスタを通過する電流の微小な変化を正確に区別することができません。

 

このたび、ミシガン大学の研究者たちが、既存のコンピュータの精度の限界を克服できる、メモリスタベースのインメモリ・コンピューティング装置【ハードディスクを使わずに、半導体メモリ(メインメモリ)だけで演算処理を行う技術】を開発しました。

 

具体的には何を行ったのか?

 

回路基板上に集積されたメモリスタの配列
出典:ミシガン大学

 

電流範囲を特定のビット値(1または0)に割り当てることで、電流出力フォーマットをデジタル化しました。また、大きな数式を配列の小さなチャンク【ひとまとまりのデータの塊】にマッピングすることにも成功し、システムの柔軟性と性能の両方を向上させました。

 

メモリ処理ユニットと呼ばれるこの新しいチャンクは、データ集約的なタスクやAIアルゴリズムを効率的に実装することができます。また、天気予報シミュレーションなどの大規模な行列演算にも有効です。

 

単純なマトリックス(列と行を持つ2次元の表)は、メモリスタのグリッドに直接マッピングすることができます。メモリスタは、行に沿った特定の電圧パルスのシーケンスにより、行と列の乗算と加算を同時に実行することができます。答えを得るには、各列の端の電流を測定するだけです。

 

一方、従来のプロセッサは、行列内のすべてのセルの値を読み取り、乗算を実行し、最後に各列を順番に加算します。

 

このシステムを実証するため、研究チームは32*32のメモリスタの配列(将来のシステムの1ブロックを表す)に対する偏微分方程式【未知関数の偏導関数を含む微分方程式】を解きました。これらの方程式は工学や科学研究においては多用されますが、解くのは非常に難しいものです。

 

電子顕微鏡で見たメモリスタの配列
出典:ミシガン大学

 

偏微分方程式を完全に解くことは不可能ですが、スーパーコンピュータなら近似解を求めることができます。通常、このような問題には巨大なデータ行列が含まれます。したがって、メモリスタの配列を用いればプロセッサとメモリ間の通信問題は効果的に処理できます。

 

研究チームは、このシステムの性能を現実世界の問題で検証しました。つまり、プラズマ流体力学(回路の製造に使用されるようなもの)シミュレータのワークフローとして、メモリスタベースの偏微分方程式ソルバーを使用したのです。従来のデジタル微分方程式ソルバーに匹敵する信頼性の高い結果を、より優れた処理能力と電力効率で得ることができました。

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