地球上で最も大きな音は、何の音でしょう?人類の歴史を考えれば、答えるのが難しそうに思われるかもしれませんが、実際には簡単なのです。それは、「クラカタウ」です【インドネシアのジャワ島とスマトラ島の中間、スンダ海峡にある火山島の総称】。
そもそも、平均的な人間が聞き取れる音の周波数は20Hz~20kHzですが、実験室での条件下では15Hz~28kHzにまで達することが科学的に証明されています。では、自分の聴力の限界を距離の面でテストしたことはあるでしょうか?
音がどこまで届くかは、温度など様々な変数に基づいています。それでも、究極の決定要因は、その音源において放出されるエネルギー量です。単純に言えば、音は、何千キロも離れた場所で聞こえるためには、激しくなければなりません。
クラカタウ火山噴火
1883年8月26日、インドネシアのジャワ島とスマトラ島ではすべてがいつも通りだったのに、突然の火山噴火によってすべてが崩壊しました。クラカタウ火山として知られる火山が、ひとつの島全体を3つの大きな塊に吹き飛ばすほどの勢いで噴火したのです。
この山から吹き出した巨大な噴煙は、大気圏まで17マイル【約27.3㎞】にも及びました。噴火は100フィート【約30.5m】近い津波を引き起こし、その地域の沿岸地域のほとんどを破壊しました。
この噴火が、前にも後にも聞いたことのないような大きな音を発生させたのです。人類史上最も激しく、最も致命的な火山活動でした。
どれくらいうるさかった?
ジャワ島とスマトラ島の衛星写真
1883年にクラカタウが発生させた音の大きさを本当に理解するには、噴火直後に起こった出来事を分析する必要があります。
手始めに、クラカタウが噴火したとき、島を通過し、クラカタウからわずか40マイル【約64.4㎞】しか離れていなかったイギリス海軍艦船ノーサム・キャッスルの日誌を思い出してみましょう。船長は次のように記載しています。
「私の乗組員の半分の鼓膜が粉々になったほど激しい爆発である。私の最後の思いは、愛する妻のことだ。私は審判の日【世の終わり】が来たと確信している」
噴火の数分後、爆風による騒音レベルは200デシベルをはるかに超えていました(現地付近)。比較すると、強力なジェット・エンジンは150デシベルの強力な音を発生できますが、人間の耳は130デシベルまでにしか耐えられません。
発生した巨大な衝撃波は、200メガトンの核爆発に匹敵します。これは、第二次世界大戦中に広島を破壊した原子爆弾の威力の約13,000倍であり、史上最大の核爆弾であるツァーリ・ボンバ【ソビエト連邦が開発した爆発規模が最大の水素爆弾】の威力の4倍です。
その音は、はるか2,100マイル【約3,380㎞】以上離れたオーストラリアまで聞こえたということです。噴火の音は3,000マイル【約4,828㎞】離れた場所でも聞こえたという報告もあります。3,000マイルを超えると音波は弱くなりますが、それでも世界中の気圧計で検知されたのです。
その後24時間で、インド亜大陸、オーストラリア、アフリカ、ヨーロッパで気圧の上昇という影響が見られました。わずか18時間でアメリカの大西洋岸に影響が及びました。5~6日間にわたり、これらの音波は36時間ごとに繰り返し検出されました。
歴史的意義
1888年に作成された1883年のクラカタウ噴火のリトグラフ
1883年の噴火の前後に行われた調査では、クラカタウ火山周辺の地震活動が激しく、地震の揺れが遠くオーストラリアまで感じられたことが明らかになっています。しかし、1883年以前にクラカタウでこの規模の火山活動が起こったという歴史的証拠はありません。
デイヴィッド・キーズやケン・ウォレッツなど、何人かの科学者は、535年にクラカタウの近くで起きた激しい火山噴火が、おそらく西暦535~536年の地球規模の気候変動の原因であった可能性を示唆しています。
歴史家は、8世紀のジャワ島に出現した顕著な王朝であるシャイレーンドラ朝の間に、クラカタウは「火の山」として知られていたことを指摘しています。9世紀から16世紀の間に起こった合計7つの火山活動がカタログ化されています。これらの火山活動の日付は暫定的に付けられており、850年、950年、1050年、1150年、1320年に発生し、その後1530年に発生しました。
被害と死者数
オランダ東インド会社の公式記録によると、クラカタウ近郊の165近い村や町が破壊され、何百もの村や町が深刻な被害を受けたということです。噴火と、その後に発生した津波による死者は少なくとも3万6,000人、負傷者は数千人に上りました。噴火は旧クラカタウ島のかなりの部分を破壊したのです。
この大災害は、世界中の気象状況にも影響を与えました。1883年のクラカタウ噴火後、北半球の夏の平均気温は1.2℃下がりました。気温は1888年まで元に戻らず、気象パターンは何年も混沌とした状態が続きました。
アメリカでは、1883年7月から1884年6月にかけて、記録的な大雨が南カリフォルニアを襲いました。同様に、ロサンゼルスとサンディエゴはそれぞれ38.18インチ【約1m】と25.97インチ【約66㎝】の降雨を記録しましたが、すべては1888年代のクラカタウの噴火に起因しているのです。
最近の地質活動
2008年の噴火
1883年の災害以来、クラカタウ地域では時折火山噴火が続いています。研究者たちは、1883年の出来事の後に形成されたアナク・クラカタウ島について、その後も継続的に成長していることに気づきました。
アナク・クラカタウ島は、2009年の最近の出来事を含め、長年にわたって多くの火山噴火が報告されています。地球上では他にも火山活動や、核爆発がありましたが、クラカタウの音は、未だに史上最も大きな音であり、私たちの耳のためには、それ以上の大きな音が発生しないことを願っています。