・研究者は初めて、十分に機能するプログラマブルなメモリスタチップを開発しました。
・センサーやスマートフォンなど、エネルギーに制約のある小型デバイスでもAI処理ができるようになります。
メモリスタは、物理的に同じ箇所で情報を保存、処理できるコンパクトなデバイスです。 これらのデバイスは、インメモリ、ニューロモーフィック(動物の脳と同じ働きをするもの)アプリケーション向けに広く研究されています。
エンジニアは既に機械学習アルゴリズム用のメモリスタを開発していましたが、機能させるには外部処理コンポーネントが必要でした。 最適なパフォーマンスを実現するのに、周辺機器と制御回路にメモリスタクロスバーで適切に統合する必要があったのです。
そこでミシガン大学の研究者は、センサーやスマートフォンなどのエネルギー制約のある小型のデバイスで直接AI処理を実行し、十分に機能するプログラマブルメモリスタチップを初めて開発しました。
これにより音声コマンドなどの複雑なタスクを解釈させる際にクラウドに転送する必要がなくなります。 計算はスマートフォンで(バッテリーをさほど消耗することなく)行われ、応答時間が短縮され、プライバシーとセキュリテイは強化されます。
メモリスタはAIアルゴリズムを効率的に実行する
メモリスタは同じ箇所でデータを処理と保存をするため、プロセッサとメモリ間の障壁を取り除き、計算速度を大幅に向上させます。
これは、ビデオや画像内のオブジェクトを認識したり、深刻な病気の危険因子を特定するような複雑なタスクを処理し大量のデータを扱うディープニューラルアルゴリズムの実装に非常に役立ちます。
開発者は、CPUと比較して低コストで高い予測精度と高速な結果が得られるため、このようなGPU上でアルゴリズムを実行することを好むのです。
「GPUは並列処理用に最適で、電力とスループットの点でCPUの10〜100倍高性能です。 新しいメモリスタチップは、さらに10〜100倍高性能になるでしょう。」- Wei Lu、論文の主著者は語ります。
各メモリスタは、一度に(コア内で)数千の操作を実行でき、この研究で開発されたプロトタイプには、5,800以上のメモリスタが含まれていますが市場のデバイスには数百万のメモリスタが存在しているのです。
参照:Nature Electronics | DOI:10.1038 / s41928-019-0270-x | ミシガンエンジニアリング
メモリスタ配列は、データをベクトル(数値表現のリスト)に変換するという機械学習アルゴリズムを実行するように設計されています。 通常、このベクトルは、メモリスタの配列に直接マッピングされる行列に格納されます。
業界初のプログラマブルメモリスターチップ
メモリスタ配列チップを、従来のコンピューターチップに接続する| 原文作者:ミシガン大学Robert Coelius
研究チームは最初に、プログラムや実行に必要な他のコンポーネント(デジタル/アナログコンバータ、従来のデジタルプロセス、通信チャネルなど)とメモリスタ配列を統合させるチップを設計しました。
このチップにメモリスタ配列を統合したのち、機械学習アルゴリズムをメモリスタ配列のマトリックス状構造に結合するプログラムを作成しました。
こうしてスパースコーディングアルゴリズム、パーセプトロンネットワーク、主成分分析(複雑なデータのパターンを識別する)という3つの異なる機械学習アルゴリズムを使用してデバイスを開発しました。
完成したシステムでは、リアルタイムのデータ処理と低エネルギーで行うのが必須のネットワークやアプリケーションに効果的なソリューションを提供することができるようになります。
続く機器、回路、アーキテクチャの革新、量子化ニューラルネットワークのアルゴリズムの進歩によっては、このメモリスタは今までより複雑で要求の難しいタスクも処理できるようになるでしょう。