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「あらゆる爆弾の母」大規模爆風爆弾MOABの威力

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本記事は、MOAB – Mother Of All Bombs | All You Need To Know
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約3分51秒

2017年4月13日、アメリカ空軍は、「あらゆる爆弾の母」の異名を持つ世界最大の非核爆弾をアフガニスタンのアチン地区にある地下施設に投下、同地区の武装勢力を制圧しました。


正式名称を「GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast Bomb(大規模爆風爆弾)」というこの兵器は、その途方もない大きさと破壊力から、頭文字のMOABをもじって、「Mother of All Bombs(あらゆる爆弾の母)」のニックネームがつけられました。


しかし、MOABの威力が実際にどれほどのもので、使用した場合にどのような影響を及ぼすかご存じでしょうか。過去1世紀ほどの間に、人類は数々の恐ろしい爆弾を開発し、壊滅的な攻撃を行ってきました。たとえば、イギリスの大型爆弾トールボーイ、あるいはそれよりも少し大型で、10トンを優に超えるグランドスラムなどがありますが、MOABはそれらとは比べ物にならない、まさに怪物です。


この記事では、MOAB開発のきっかけや、その能力と強さについて解説します。

 

MOAB開発のきっかけと構想

実験前の爆弾の試作品を点検しているアル・ワイモーツ氏と、主任模型製作者のジョセフ・フェレンツ氏(左)

 

アメリカ軍は、型破りな実験にも常に果敢に挑戦しています。そんな実験のひとつとして行われたのが、GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast Bomb、通称MOABの開発でした。設計者はアルバート・L・ワイモーツJr.。アメリカ空軍の研究プロジェクトの一環として、2002年に開発が始まりました。


MOABの基本的な動作原理は、この爆弾の前身であり、ベトナム戦争や、最近ではアフガニスタンでも広く使われている大型爆弾、BLU-82のシステムをベースにしています。


MOABは目標物を貫通することを目的としておらず、空中で爆発するように設計されています。これは、軟標的から中程度までの標的に適しており、洞窟や峡谷といった広いエリアにダメージを与えることができます。地表に到達する直前に地上約2~3メートルの地点で爆発し、その範囲は半径1.5kmにまで達します。


その大きさゆえに、MOABを搭載、運搬することができるのは大型の輸送機に限られます。また、このミサイル爆弾は、投下後にGPSシステムによって人の手でコントロールすることができるので、ピンポイントで正確に目標物へ誘導することが可能です。

 

仕様と能力

フロリダの空軍博物館に展示されているMOAB(画像提供:Wikimedia Commons)


2003年に導入されて以降、今日までに製造されたMOABはわずか15発。1発あたりの重量はおよそ9,800kgで、長さは約9.1m、半径は約51.2cmです。


公式資料によれば、GBU-43/B1発あたりの開発費は約1,600万ドル、プロジェクト(研究)全体では3億ドルもの費用がかかったと言われています。しかもこの金額は、2000年代前半当時のドルレートに基づいたものだということを忘れてはいけません。


爆発威力は46ギガジュール。これは11トンのTNT火薬に匹敵します。爆発の際にMOABから放出されるエネルギー量は、マグニチュード6.0の地震のエネルギー量とほぼ同程度だと言われています。


このMOAB、一体何でできているのでしょうか。コンポジションH6という致死性・爆発性の高い化学物質の混合物が主な材料で、周りは中程度の重さのアルミの外装で覆われています。


その威力は、冷戦時代のM-29デイビー・クロケットという戦術核兵器ときわめて近いものがあります。M-29は持ち運びのできる無反動銃で、弾丸にはアメリカで製造された中でも最小レベルの核弾頭が使用されています。

 

この小型核兵器はTNT火薬10~20トン分の爆発威力を持つため、威力ではMOABと同程度です。しかしそれでも、1960年代に弾道ミサイルに広く使われていた1.44メガトンの熱核弾頭W49に比べると、その総威力はわずか144,000分の1、すなわち0.0007%しかありません。


MOAB開発は、慣れない土地で未知の戦術を使う相手に対抗するために、アメリカ空軍が急ピッチで取り掛かったプロジェクトでした。完成を急いでいた軍部は、外装の色にグリーンを採用しました。当時すぐに十分な量を用意することができる唯一の色だったからです。

 

これまで実戦で使われたことは一度もなかった


2001年に、タリバンとの戦闘で旧式のBLU-82という大型爆弾が再び使われましたが、敵に与えたダメージは中程度のものでした。このときアメリカ空軍は、もっと広範囲に損害を与えられるような、大型かつ強力な兵器の必要性を感じたものと思われます。


2003年のイラク侵攻において、アメリカ国防総省でMOABをサダム・フセインに対して使う計画が持ち上がりましたが、民間人の犠牲者を出す可能性があったため、すぐに却下されました。


そのため、4月13日の攻撃以前は、制御された環境下での実験でしかMOABが使われたことはありませんでした。最初の実験が行われたのは、初めて製造されてから1年後の2003年、フロリダのエグリン空軍基地でのことです。


軍当局によると、爆発によって1万フィートもの高さまで粉塵が舞い上がり、地平線に沿ってとてつもない大きさの炎があがり、巨大なキノコ雲は30km離れた場所からも見えたといいます。

 

類似の兵器


このような大規模な爆弾を手に入れられるのがアメリカだけだと思っていたら大間違いです。2007年末には、最新の燃料気化爆弾の実戦テストに成功したことをロシア政府が発表し、これを「あらゆる爆弾の父」と呼びました。ロシアは、この爆弾がアメリカのMOABの4倍の威力を持っていると謳っています。

超大型爆弾グランドスラム


上記のロシアの主張には主にアメリカの軍事専門家たちが反論しており、議論の余地があるところですが、実際に重量においてMOABを上回る爆弾は過去に存在しました。22,000ポンド中容量爆弾、通称グランドスラムは、第二次世界大戦中に使われ標的に壊滅的な打撃を与えた、いわゆる「地震爆弾」級の兵器です。


公式発表によると重量は22,000ポンド(10トン近く)あり、MOABをわずかに上回っています。しかし、この爆弾は硬い標的を貫通してから爆発することでより効力を発揮するよう、重い鋼鉄が使われており、重量のほとんどはこの鋼鉄によるものです。


もしロシアの主張が事実なら、燃料気化爆弾が過去に製造された中でもっとも強力な非核爆弾ということになりますが、事実でないとすれば、アメリカのMOABの勝利となります。

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