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UXがブランド力を決める理由

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本記事は、Your brand is your user experience. Here’s why.
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約7分14秒

企業ブランドはマーケティングで決まるもので、UXは製品で決まるものだという考え方は、誰も得をしない結果を招くでしょう。

 

ブランディング業界のかつての中心要素はパッケージデザイン、消費者やユーザーへのメッセージ、そしてロゴでした。Nikeのブランドを確立した有名なロゴ「スウッシュ」やキャッチフレーズ ”Just do it.”からも分かるように、こういった要素はもちろん今でも大切です。しかし、現代社会ではデジタル製品は靴と同じくらい身近な存在になりました。

 

ユーザーはあらゆるアプリケーションやウェブサイトに多くを期待します。期待に添えないものは、追いやられ競合他社の製品に負けてしまいます。

 

企業のブランド力はユーザ・エクスペリエンス(UX)の質とイコールであり、あるいはその逆のことも言えます。我々の賛同とは無関係に、ブランドとUXはピーナッツバターとジャムのごとく引き離せない関係です。ブランドとUXの統合が、企業の競争優位性につながることは多く見られます。今回はその理由を見ていきましょう。

 

チャンネルを超えた大胆な企画

現在では看板商品がデジタルではなく物理的な製品である企業でも、ブランドのプロモーションや製品の販売促進においてUXは大変重要な役割を果たしています。例としてNikeの開発したアプリを見てみましょう。

・Nike:パーソナルNikeショップ

・Nike SNKRS : Nikeのスニーカー専門サイト

・Nike Training Club: ワークアウト、フィットネスガイド

・Nike Run Club: ランデータ記録、トレーニングプラン作成

・NikeConnect: スポーツニュース

 

Nikeはこのほかにも大変多くのウェブサイトやもちろん、店舗の運営をしています。

 

Nikeを例に挙げている理由は、このアイコン的な企業がいかにして自身のブランドをオンラインおよび実店舗にてのUXへのシフトに成功したのかがよく分かるケースだからです。一方で、大半の企業はブランディングとUXを同一視していません。

 

むしろ、大半の企業はブランドとUXの管轄を別々のチームに割り当て、この2チーム間の目標や利害関係が衝突してしまう場合すらあります。結果として緊迫した雰囲気になり、優先順位に関して口論が始まり、貴重な時間が失われてしまっています。

 

事業計画を行う際、トレードオフは決して簡単なことではありませんし、製品チームとマーケティングチームが合体して巨大チームをつくることもお勧めしません。しかし、有能なリーダーがいれば、両チームが共通のビジョンに向かって進むように、1つのユーザー中心の目的を設定してくれることでしょう。

 

両チームのリーダーが同じ価値観と意思決定フレームワークを持っているならば、話し合いはもっと有意義なものになるはずです。

 

両チームがブランドとUXに対する価値観を共にすることで、チャンネルと製品の境界線を越えて大胆な企画を起こすこともできます。全員が同じ方向を向いて進むことで、企業は中途半端なものではなく顧客を感動させるユーザー・エクスペリエンスを徹底することができます。

 

IT業界2つの見解

IT業界では、ブランドに対して全く異なる2つの見方が垣間見られます。

 

「ブランドはわが社の全てだ。我々の意思決定を常に導いてくれるものであり、我々の成功には何よりも大切な存在だ。」もしくは「ブランドは大して重要ではない。ユーザーはわが社の美学ではなく、〇〇(その企業の製品やサービス)のためにわが社のもとへやってくるのだ。」というものです。

 

どちらの見解も欠点がありますが、完全に間違っているわけではありません。

 

一つ目の見解を持つ企業は一貫性があり入念に築き上げられたブランド力の持つ影響力をしっかり理解していると言えます。こういったタイプの企業では、マーケティングチームとUXチームが境界線を越えて一丸となり協力する可能性が高いでしょう。しかし、この見解はある重要な区別が出来ていません。

 

ユーザーからのフィードバックは意思決定においてブランドと同等に重要です。ブランドだけでは企業戦略の路線を引くのに不十分です。なぜなら企業戦略は他の企業活動と同じく顧客からのフィードバックを基に立てなければならないからです。

 

2つ目の見解はほぼ真逆のものです。この企業はおそらくマーケティングチームにも製品チームにもブランドに関する公式ガイドラインを持たず、クリエイティブ担当もほとんどいないでしょう。管理職員はロゴとブランドは同じものだと思っているかもしれません。

 

こういった企業では1人しかいないUXデザイナーがコンテンツマーケティング担当者から時間をもらい、2人でなんとかそれらしいUXを応急処置で作ろうと苦労している残念な様子が想像できてしまいます。

 

こういった見解を持つ企業は、明らかに「美学」とブランディングということなった2つのものを混同させていますが、正しい部分も1点あります。

 

確かにユーザーの抱える問題を解決することが最終目的です。製品やサービスが広告通りの必要とされる機能を果たせば、ユーザーはそのブランドに対して良い印象を持ち、リピーターになってくれます。

 

ただし、そういった機能が競合他社の製品やサービスより優れている必要がありますが。

 

「より優れている」というのは、値段、便利さ、カスタマーサービス、ユーザビリティ、ソーシャルインパクトを始めとする様々な要因にて当てはまります。こういった要因全てがブランドの印象につながり、UXを改良するのに役立ちます。

 

上記のどちらのタイプの企業も、自身の具体的顧客ベースのニーズやウォンツを範疇に入れた事業計画を立てなければ、収益を上げることは難しいでしょう。ブランド・ガイドラインに従って全てを決定することはできません。その一方で、ユーザーは実際に製品やサービスを目の当たりにするまで自分が何を求めているのか分かっていない場合もあるので、ユーザーに従い全てを決定することもできません。

 

ユニークなブランド・アイデンティティ

競合他社が益々増えている中、IT企業は自身のブランドにとって「他社より優れている」とはどんなことなのかをはっきりさせることで、他社との差別化ができるでしょう。そしてそれを実現するには、ユーザーからのフィードバックが不可欠です。

 

スタートアップならばどの企業もユニコーン(評価額が10億ドルを超えるスタートアップ)になりたいものです。他にはなく、世の中に大きな変革をもたらすコンセプトを売りにする会社を起業するのは誰もが夢見ることでしょう。

 

しかし、成功したビジネスの大半は、特別というわけではありません。魔法が使えるわけでもないですし、その他に特殊な性質があるというわけではありません。他社よりも勢いはあるかもしれませんが、それでも多くある企業のうちの1つに過ぎません。

 

このことはフォーチュン500に選ばれた企業を見てみれば分かるでしょう。上位にランクインしている企業は、健康保険会社、小売業、銀行、エネルギー会社、通信プロバイダー、そして世界最大の紙メーカーであるInternational Paperも含まれます。(紙メーカーといえばドラマ“The Office”のMichael Scott Paper Companyを思い出しますが。)

 

こういった企業は各業界でのNo.1かもしれませんが、事業コンセプトはありふれたものです。

 

企業のサービスや製品がどんなものであっても、必ず競合が存在します。ですから、ユーザーが他社よりも自社を選んでくれる動機が必要です。他の制約条件がなければ、その動機を生み出すのがブランドなのです。

 

多くの企業がブランド・アイデンティティはビジュアルのみで決まると考えています。確かに、色使いやフォントやロゴは大切ですが、それだけではありません。

 

ブランド・アイデンティティを支える戦略はユーザーの反応とデジタル製品の中心機能に沿ったものであるべきです。ユーザーインテラクションの中心は、類似したツールやサービスと差別化を図るため、ブランドの精神に共鳴するものであるべきです。

 

例えば、タスク管理アプリAsanaでは、ユーザーが終了したタスクをタスクリストから外すと、見ているだけで楽しい気持ちになれる動物たちがスクリーン上を横切り、タスクを完了した際の達成感が高揚します。また、タスク管理ツールもブランド・アイデンティティの強化に役立っています。

Asanaはイルカにスクリーン上を横切らせる事で得られたマーケットシェアの正確な数値が分かるでしょうか?いや、分からないでしょう。しかし、こういった記憶に残る瞬間がユーザーエンゲージメントの継続を可能にしています。

 

それに実際、私が個人的にAsanaを利用している大きな理由はここにあります。他社とは異なるアイデンティティを築き、好印象を残すためにユーザーとの接触(インテラクション)を活用することで、企業は競合他社との差別化を測る新たな方法を見つけつつあります。

 

ブランド・プロミス

ブランド・アイデンティティのマネージメントが独立して行われていると、それは一目瞭然です。UXチームの参加なしでブランド・アイデンティティを管理すれば、自社製品やサービスが守れないブランド・プロミスにつながる危険性があります。

 

マーケティングチームが顧客を惹きつけるキャッチフレーズを思いついたとしても、優先順位がはっきり整理されていなければ、うっかり誤解を与えかねません。マーケティングとUXのビジョンが一貫していない企業は下記のようなシナリオに陥ってしまうことがよくあります。

 

チャンネルを通してコンバージョンにつながるメッセージを届けるこはできるが、重要な情報を入れず一部の製品機能のみを強調して伝えてしまう。

ユーザーが具体的な期待事項を基に製品やサービスを申し込む。

製品が自身のニーズに合っていないと判明し、ユーザーの不満の原因となる。

上記のユーザーの間での企業のブランドイメージに半永久的に傷がつき、口コミによるマーケティング効果が期待できなくなる。

 

要するに、顧客と交わしたブランド・プロミスが、明らかに騙したというわけではなくても、顧客の期待に適ったものではなく、顧客離脱率が上昇してしまうということです。

 

例えば、X社が自社の製品検索機能のスピードに関するメッセージをテストするとしましょう。テストの結果、コンバージョン率の増加に大変効果的であると判明したので、ブランドコピーにそのメッセージを入れるとします。そのメッセージは、「瞬時に必要なものを発見!」というもので、広告チャンネルを通して広まっていきます。

 

検索機能は問題なく機能しますが、驚くほど素晴らしいという訳でもなく、製品チームも大きな改善の余地がありません。製品チームはおそらく検索についてのコピーが広告に加えられたことも知らず、それに気がつくのは顧客定着率が低下し始め、カスタマーサービスチームから顧客フィードバックの情報が流れてきてからでしょう。

 

それを受け、製品チームはマーケティングチームを責めますが、新たなブランドコピーによりコンバージョン率が急上昇したデータを見せ反論します。マーケティングチームは、管理職からの売上数値達成のプレッシャーをかなり感じており、両者の話は平行線のままです。

 

製品チームが必死で検索スピードを改善させるか、マーケティングチームがまたしても月目標未達成に終わり、クビを覚悟するかどちらかの選択肢しかありません。このシナリオでは誰かを責めることは簡単で、大抵のチームがそうするでしょう。しかし、本当の原因はビジョンの結束およびブランド・マネジメントの欠如でしょう。

 

TOFU(購買プロセスの最初期ステージ)に向けた広告からメール、直接の製品使用に至るまで、ユーザーとの接触は何らかの経験(エクスペリエンス)を伴います。

 

マーケティングとUXを別物としてみなせば、ブランドはユーザーとの接触の度に一貫したストーリーを作り出すことが出来なくなってしまいます。

アメリカの実業家兼投資家であるジェフ・ベゾスは下記の通りに述べています。「ブランドとは自分がその場にいない時、他の人があなたのことをどのように噂しているかだ。」

 

消費者の口コミは、初めの接触から最後の接触までUX全体に関してのものです。このため、マーケティングチームとUXチームは(まだそうでなければ)大の仲良しになり、共に素晴らしい製品やサービスを創り上げていくべきでしょう。

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